ネガティブ論

躁うつ病はなの頭の中を綴る日記ブログ。 ねこもりブログから来た方は、その落差に要注意。

2018年07月

ある日35才になる弟がお金を貸してほしいと言ってきた。第7話。

その夜は、うまく眠れなかった。
帰ってきた旦那に事情を話し、借金について債務整理について弁護士について調べ、本人がまだ語ってはいないけれど借りてそう滞納してそうな項目をピックアップした。
詰め込んだ情報が頭の中を駆け巡り、目を閉じると文字と数字の世界に落ちていくようだった。

あの電話の後も、少しだけゆたかくんと話をした。
でも、わかったのはゆたかくんがポンコツだということだけだった。
水道電気ガスに件の家賃も滞納しているが、滞納額が明確なのは家賃だけ。
水道電気ガスは全て、いつから払ってないのか、金額はいくらなのか、そもそも払い込み用紙はどこにあるのかさえ不明。
ガスに至ってはすでにかなり前から止まっているという。
他の借金や何かの滞納については、あるかもしれないしある可能性は高いけどどれだけ頭をひねっても「覚えてない」の一言しか出ず。
借金の経緯にいたっては、本人もうろ覚えで曖昧だったが、今年の頭にサラ金にけっこうな額の借金がある状態で200万の車を全額残価型クレジットで購入したらしい。
そしてその後に、複数あったサラ金と1枚だけ持っていた楽天のクレジットカードをおまとめローンでひとつにして、それによって空いたクレジットカードの残高をあっという間に使い切ったという。
この時点で、まだおまとめしたローンの支払い1回目も始まってないのに、まとめてなくなったはずの楽天クレジットカードの残高は元通りになっているわけだ。
これは、債務整理が厳しくなる借り方だ。

ゆたかくんの口からは、幾度か「自己破産」の単語が出た。
明言してはいないが、いざとなったら自己破産があると思っているんだろう。
でも、2カ月ほどで一気に借金を数百万単位で増やし、しかもおまとめして空いた枠を一瞬で使い切って自己破産なんて、免責が下りるわけがない。
バカでもわかる。
故意犯だ。
始めから、好きなことして使い切って自己破産するつもりだったとしか思えない。
擁護したくもない姑息さだ。

会社の先輩からは去年2回に分けて30万借りているが、この返済期限は去年の12月だったそうだ。
今は6月。
半年経過しているが、何の連絡もしていないらしい。
友達に4万借りたのは先月の話だという。
スロットに行って負けて生活費がなくなったのを借りたという。
つまりつい先月までスロットをしていたというわけだ。
母に借りた20万はその出来事の少し前の話らしいから、そこで使ったスロット資金はもしかしたら母からのお金から出ていたのかもしれない。
その時も名目は家賃だったというが、結局今でも滞納しているところを見るとちゃんと目的通り支払わなかったのは明々白々だった。

ある日35才になる弟がお金を貸してほしいと言ってきた。第6話。

「あのね、話があるの」
声だけでにこにこしているのがわかる母を遮って、いつもよりトーンの低い声で話した。
何かを意識したわけじゃなかったけれど、いつもどおりの声は出なかった。
「こみいった話だから、お父さんにかわってくれる?」
わかったと母が受話器から離れる気配に、少しほっとした。
さっきは本気で腹が立ったのにな、と自分のいい加減さに苦笑した。

はい変わりましたと、のんびりした父の声が耳に入る。
たぶん、夕食も終わってゆっくりお茶でも飲んでいたんだと思う。
今日という一日がこんな結末で終わるとは思ってもいないだろう。
極力感情が入らないよう、事務的に話を切り出した。
「今日、ゆたかくんが私にお金を借りに来た。
 金額は15万。
 名目は家賃。
 でも、話のつじつまが合わないから突っ込んで聞いたら、サラ金、クレカ、友達、ローンで、総額500万近い借金があるらしい」
ゆっくりとした声で、そうか、と返す声が聞こえた。
「それに、お母さんもお金を貸してるはず。
 金額は20万。
 時期は今年の春。
 お父さんは知ってる?」
いや知らない、と小さな声が呟いた。
やっぱりかと思いながら、こういうとき父親は何を思うんだろうなと思った。
「もう個人でどうにかできるレベルじゃない。
 少なくともゆたかくんでは返せない。
 どうするのか、一度話し合うべきだ思う。
 明日、実家で家族会議をしたいんだけどどうかな」
わかった、と父が答えた。
電話の向こうには下の弟もいたらしく、その場で時間を調整して、明日仕事終わりに父母、はな夫婦、ゆたかくんに、はなとゆたかくんの下の弟全員で実家に集まることになった。
母に電話をかわってもらい、あなたが勝手にゆたかくんにお金を貸したことを話したことを伝え、自分のしたことを自分の口できちんと父に話すよう言った。
全ては明日改めて相談することになった。

衝撃過ぎたのか、両親とも驚いたリアクションさえ存在しなかった。
そりゃそうだろう。
田舎の出身の両親は、口でこそ平等だというけど根っこの部分は長男教。
自分たちの人生の最後は、このゆたかくんに見てもらうつもりだったはずだ。
私が感じた感情は怒りだったけど、この人たちは明らかに落胆した。
それだけ期待があったということだ。
目の前では、うつむいたゆたかくんの額に汗が浮かんでいた。
自分の欲で500万近い借金を使い切った男。
その後始末さえひとりでできずに人に迷惑をかける男。
こういう時に全てを受け入れて「頑張ろう」と言える人は強いな、と思った。

もうお金もほとんど持ってないゆたかくんに食事をとらせ、明日仕事が終わり次第またうちに来るようにと告げた。
わかりましたと返事したゆたかくんは、ぴかぴかの新車に乗り込んで帰っていった。
全てが始まった一日が、ようやく終わった。

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