1日はあっっという間に過ぎた。
待ちどおしいのか、迫ってくる恐怖か。
足の裏がずっとしびれたようにうずいていた。
話し合いが終わった後の想像が、全くできなかった。

仕事を早めに終わらせた旦那とゆたかくんを待ち、3人で実家に向かう。
実家では、私たち以上に神妙な面持ちをした両親に出迎えられた。
長く重い夜の始まりだった。

実家の居間で、大きな座卓を囲んで座る。
父と私でゆたかくんをはさみ、正面には母と下の弟と旦那。
口火を切ったのは、私だった。
「昨日電話で告げた通り、ゆたかくんには借金がある。
 総額500万弱。
 使った先は主に浪費。
 ギャンブル、風俗、分不相応な買い物、ネット課金。
 家の家賃も滞納してるから、近いうちに保証人である両親に連絡がくるところだったと思う。
 ・・・知ってた?」
全員が小さく首を振った。
父と母の眉尻はこれ以上ないほど下がっていた。
ゆたかくんは、今日も真っ赤な顔をしてうつむいていた。

なぜそんなに借金をしたのか。
いつから借りているのか。
どういう返済プランだったのか。
どうしたらそこまで借金がふくらむのか。
両親や下の弟から出る疑問は、しごく当然のことばかりだった。
けれど、ゆたかくんの返答はひどいものだった。

「わからない」
「覚えてない」
「返せると思った」
「たいしたことないと思った」

踏み込んで聞いていけば、飛び出すのは衝撃の言葉ばかり。
けれど、のらりくらりといい加減に逃げている様子ではない。
エアコンのきいた室内で、ひとりだけ額から汗噴き出して、真っ赤な顔で考えこんでこの返事。
すらすらと口が回るタイプではないのは知っている。
必死に考えても頭の中から何も引き出せない、私にはそんな風に見えた。
だから、みんなで辛抱強く問うていく。
なんせ、事実関係を明確にして借金の清算の仕方を考えなくてはいけない。
今日はそのために集まったのだ。
「返せると思ったっていうけど、実際返せてないのが現状だよね。
 それはこの先どういう手段をとるつもりだったの?」
におわせたのは債務整理だった。
でも、返ってきたのは予想外の返事だった。
「・・・返してく、つもりだった」
「どうやって?」
「・・・どうにかして」
「どうにかって?
 もうまともに返せる額じゃないでしょう」

「・・・まだ大丈夫、まだなんとかなる」
ゆたかくんの顔は真剣だった。

手取り約20万。
週休1日。
残業代は当然サービス。
そんな会社がゆたかくんの生命線。
だけど、今月末の支払いだけでも、
 家賃(毎月5万を2カ月滞納中)
 光熱費(期間不明で滞納中)
 車のローン
 楽天のクレカ(9万円)
 アコムの支払い
 携帯代(3万円)
これだけある。
これに、生活費である食費、日用品、ガソリン代、会社のお昼代(後払い)、トムにかかる費用がのってくる。
20万円引くこの総額。
小学生でもわかる引き算だ。
なのに彼は、これでもまだ破たんはしていないと主張した。

彼だけスタートラインが違っていることに、ここでようやく気がついた。