話しをまとめるとこういうことだ。
借金というのは、「お金を借りる」と書く。
サラ金や友人は、借金を申し込み、お金を借りて、必要ならば借用書も書いたので借金。
でもそれ以外、例えばクレジットカードや家賃の滞納は、払わなければいけないものを払ってないだけだから借金ではない。
「お金そのものを借りたかどうか」
つまり、ゆたかくんに言わせれば、ローンでさえ借金ではないわけだ。

頭が悪いとは知っていたけど、これほどとは思わなかった。
目の前で申し訳なさそうに185cm100kgの体を縮こませているゆたかくんを見下ろす。
握りしめた手のひらがしびれるように波打っていた。
「・・・クレカ、滞納、ローン、全部借金だよ。
 何かどれだけあるのか、全部話して」
ゆたかくんの言う借金の総額だけで、134万強。
ゆたかくんが借金じゃないと言い張ろうが、クレカも滞納もローンも借金だ。
借金だと思わず使っていたなら、バカみたいな使い方をした可能性は高い。
総額は、まだまだ増える。
はなの頭の片隅ではもう、債務整理や自己破産の文字も浮かび始めていた。

怒りで静かになるはなとは対照的に、目の前のゆたかくんは激しく動揺していた。
もともとうちに来た時から落ち着かないそぶりを見せていたのが、声がどもりだし、瞬きが止まらなくなり、汗が吹き出し、目は泳ぎ、初夏の夕涼みにひとり真っ赤な顔をしていた。
それでも、もういいよと言ってやるわけにはいかない。
今必要なのは、正しい現状把握。
説教や詰問や詳細はまだ後だ。
冷静になれと、何度も自分に言い聞かせた。

「クレジットカードは、キャッシングと買い物で、100万くらい」
楽天カードを、限度額いっぱい使っていると言った。
「滞納してるのは、家賃が3か月分。
 水道代と電気代とガス代は、もういくらかわからない」
聞けば、ガスはもう止まっているらしい。
自炊もできなくなれば、出費がかさんでいくのも早かっただろう。
総額は、ざっくり20万強くらいだろうか。
「車のローンが、200万」
今年の頭に新車を残価型クレジットで購入したそうだ。
その頃にはすでにかなりの借金があったはずなのに、ローンは借金じゃないと思ったらしい。

これで、合計は454万強。
概算の時点でこの額ということは、たぶん現実はもう少しある。
さっき聞いたゆたかくんの年収は、手取りで300万。
まともに返していたんじゃ、たぶん返し終わるのは無理だろう。

「・・・あと、お母さんにも20万借りてる」
474万強!
何やってんだあのバカ親は!